一般の専門学校を卒業後、中堅のアパレルメーカーに就職され、アシスタントとして5年間勤務されたのち、結婚退職。
勤務先のアパレルメーカーの先輩と結婚されたそうですが、二人のお子様にも恵まれ、結婚してから10年ぐらいの間は、子育てに専念されていたそうです。
その後、お子様が二人とも小学校に通いはじめ、少し時間にゆとりができた黒田さんは、今後の自分の人生についてお考えになり、一念発起、看護学校を受験しようと決意されます。
受験を決意してから1年後、見事、希望の看護学校に合格され、37歳にして、看護学生になったのです。
黒田さんによれば、30代半ばになってから、突然、看護師になろうと思ったわけではなく、以前から看護師の仕事には強い興味があったそうです。
実は、高校卒業時にも看護学校を受験したそうですが、その時は、希望の学校には合格することができず、代わりに合格通知がきた服飾系の学校に入学され、そのままアパレルメーカーに就職することになったとのことでした。
その後、旦那さんをはじめとしたご家族の協力も受けながら、無事、家庭と勉強を両立させて学校を卒業、国家試験にも合格され、40歳にして正看護師の免許を取得されました。
その黒田さんが、最初の就職先として選んだのが、大学病院。
労働環境が厳しいと言われることも多いため、周囲からは、大学病院への就職を心配する声もあったようですが、黒田さんとしては、元々大学病院で働くことを夢見て看護師になったということもあったようで、周囲の心配をよそに、その大学病院へご入職をされたのです。
しかし、この大学病院への入職は結果的にはうまくいかず、ちょうど1年で病院を退職することになってしまったのです。
当然、大学病院での勤務は覚えることも多い上に、労働環境も楽ではないと、黒田さん自身も、十二分に覚悟はしていたつもりだったといいます。
しかし、入職してみると、当初黒田さんが予想していたよりも、はるかに厳しい環境だったといいます。
黒田さんによれば、日勤終了後に家で食事の用意をするどころか、その日に家に帰ることもままならない状況が続き、家に着くのが午前零時を過ぎることも珍しくなかったそうです。
この黒田さんから、看護プロに転職のご相談いただいたのは、大学病院への入職からちょうど1年が経過する、3月末での退職が決まり、これから就職活動をはじめようという、まさにその時だったのです。
大学病院での1年ですっかり自信を失くした黒田さんのご希望は、内科系のクリニックでの勤務でした。
大学病院での1年の経験から、黒田さんが仰るには、自分には、看護師が100名単位でいるような大所帯の組織で、最先端医療に携わるというのは向いていない。
むしろ、クリニックのような小規模な組織であれば、アットホームな雰囲気の中で、ゆったり働くことができる。
看護師の年代層も、自分と同じ方が多いのではないか。
そうお考えになったようです。
看護プロでは、一旦黒田さんの希望を伺い、その希望にぴったりの求人がないかどうか、お探しいたしました。
その結果、指定のエリアで内科系のクリニックでの求人が2件見つかり、まず、黒田さんにご案内させていただきました。
ただ、すぐに応募を勧めるのではなく、本当にこの選択が黒田さんにとって良い選択なのかを、少しだけ考えていただく時間を取っていただきました。
というのも、黒田さんは、定年まで看護師の仕事を続けていきたいと、何度も口にされており、その観点から言えば、このタイミングでクリニックを選択することは、必ずしも良いとは言い切れないと、看護プロでは考えたからなのです。
このように考えた理由はいくつかあるのですが、まず一般論として、大学病院でのご経験は、100%というわけではないものの、クリニックのような環境では活かし難いという点があります。
クリニックの看護師に求められるのは、大学病院で身につけられるような局所的な最先端医療に携わった経験ではなく、むしろ、浅くても良いので、幅広い知識や経験が求められると言われています。
また、大学病院では、研修医が多数在籍していることも多く、注射や採血といった業務に、看護師が関与できないということも少なくありません。
この点もクリニックに勤める際にネックになることが多いのです。
大規模な病院と違い、プリセプターがつくこともほんどないため、例え採用になったとしても、黒田さんのような経験の浅い方の場合、結局ついていけず、短期で辞めるということにもなりかねません。
看護プロでは、このような点を黒田さんにご説明し、クリニックはクリニックで話を進めつつ、他の選択肢についても、検討してみてはどうかとご提案させていただきました。
クリニック、透析、介護、外来、精神科病棟、療養病棟、急性期病棟と色々な選択肢がありますが、将来的にツブシがきくという点では、やはり、急性期病棟でのご経験が一番良いと言えます。
一度急性期で何年かご経験をされれば、その後は、色々な選択肢を選ぶことができますが、黒田さんの場合、ご年齢を考えると、その逆、つまり、後から急性期の経験を積み、その後の選択肢を広げるというのは、なかなか難しいと言えます。
そのあたりのことを率直にお話させていただきつつ、一般の民間病院と大学病院で、就業環境、業務がどう違うのかをゆっくりとお話させていただきました。
その結果、まだ不安はあるものの、選択肢の一つとして、一般の民間病院で、病棟業務にチャレンジするということも、検討してみようということになったのです。
ただ、とはいっても、それだけに絞ることはできないので、様々な方向性を比較するべく、実際に病院やクリニックなどを、いくつか見学に行くことになりました。
看護プロではご本人と相談の上、急性期、療養型、精神科の病院での病棟勤務、そして、クリニックの外来などの見学を、2週間ぐらいの間で集中的に5件設定させていただきました。
その結果、紆余曲折はあったものの、最終的に黒田さんは、200床弱の急性期の病院に入職されることを決断されました。
やはり、長く看護師として仕事をしていくためには、ここでもう一度病棟での経験を積むことが、何より必要と痛感されてのご判断のようでした。
病棟の雰囲気や研修体制が、以前の職場と比べて自分にフィットしているとお感じになったことも、クリニックに行くか急性期の病院に行くかを迷っていた、黒田さんの背中を、最後にひと押ししたようです。
入職から3ヶ月が経った頃、黒田さんに連絡を取ってみました。
4月入職ということもあり、中途入職ではあるものの、同時に入職された方が多くいらっしゃるそうで、たくさんの同期ができて心強いというお話をされていました。
中途だけではなく新卒入職の方も数名いらっしゃるそうですが、この病院での同期の方々は、以前の病院と違い、年齢層もバラバラで、比較的馴染みやすいというお話をされていました。
また、黒田さんは中途採用入職ではあるものの、看護師としての経験が豊富というわけではないため、自らの希望で、新卒と一緒に半年間は研修を行い、しばらく夜勤には入らないような扱いにしてもらっているとのこと。
黒田さんとしては、一から看護師としてやり直したいという決意を持って入職されているので、こうした扱いをしてもらえて嬉しいとのことでした。
今度は長く続けられそうとお話されていましたが、何より、看護師として長く仕事ができるよう、自分の技術を磨きたいと仰っていたのが印象的でした。
黒田さんのご活躍、心よりお祈りしております。