ローザス医療ニュースブログ


英国の経験から学ぶこと

医療関連の新書のご紹介を一つ。

公平・無料・国営を貫く 英国の医療改革
これからの日本にとって、示唆に富む内容が多い。

イギリスと言えば
「ゆりかごから、墓場まで」が代名詞の高福祉国家でした。

その根幹をなしてきたのが、戦後すぐにできた「NHS」(=national health service)という制度。
3割負担どころか、医療費「無料」の制度でした。

ところが時代とともに、これが立ち行かなくなる。
財政的な非効率、悪平等・画一的といった、批判が強くなってきたわけです。
病院で長時間待たされるどころか、
「風邪の治療を受けるのに一週間待ち」みたいなひどい事態が多発していたようです。

それが、2000年からのブレア政権で大きな変革を遂げた。

日本とイギリスは、制度上の違いはかなり大きいものの
変革のやり方は、参考になる部分はあると思います。

大きな手順としては、下記のように進んだとのこと。
第1ステージ:応急処置
第2ステージ:医療制度の進化
第3ステージ:定着と調整

第1ステージでは、医師・看護師不足と言った問題を解決するために
医師・看護師の給与アップ、人員の増加を図る。
この段階では、国の医療費を大胆にも2倍に引き上げている。

医療のレベルを底上げするための、緊急的な対策です。
外国人の看護師等の受け入れも行っていたようです。

第2ステージでは、増えた医療費を上手く配分するために
国から地域に少しずつ、権限を移し
地方の実情に合わせた、財源の使い方ができる仕組みを整えた。

第3ステージでは、上記のやり方がよりきちんと回るような取り組みを行う。

つまり
「財源増・インフラ整備→組織改編→質・生産性の向上」
といった大きな絵柄の中で、10年かけて改革してきたわけです。

翻って、日本の政治は大丈夫でしょうか???
第1ステージに関しては、選挙が近いこともあり
バラマキ的な政策が、かなり発表されてはいますが
10年かけて改革するほどの大きな絵柄(将来像)を見据えている政党はない気がします。

あるなら、きちんとそれを発表してほしい!!!

株式会社ローザス 柴崎高聡

2009年08月20日カテゴリー:医療全般