医療費が財政を圧迫する
「医療費が日本の財政を圧迫する」
今も今後も、大きな論点になるであろう問題を
もう1度、整理してみました。
現在の客観的な事実はこの3つ
・2006年における日本の総医療費の対GDP比は8.1%
・高齢化に伴い、総医療費は増加している
・これは先進国の中では最も低い(対GDP比が最も高いのは、米国の15%)
これに対する解釈は2パターン。
(1)諸外国に比べてまだ低いのだから、日本はもっと社会保障をするべきだ
(2)高齢化に伴い総医療費の増加は明らかなのだから、少しでも総医療費を抑えるべき
ごく単純化した話なので、異論はあるでしょうが
わかりやすく考えるための捉え方だと思ってください。
(1)の議論が盛んになされていますが、これは少々乱暴な議論と言わざるを得ません。
ご存じの通り、GDP比率が高いアメリカはいよいよ首が回らなくなり
オバマ大統領が、本格的な医療保険制度改革に乗り出しています。
当たり前ですが、高くなりすぎると、やはりまずいわけです。
諸外国と比較して医療費が低いとはいえ、着々とGDPに対する比率は高まっている。
20年前に比べると、3%以上の上昇。
このペースでいくと、40年後には今のアメリカと同程度の水準になります。
日本の人口推移と、現在の産業動向からすると
おそらく、長期的にはGDP自体も落ち込む。
GDPが落ち込むということは、何もしなくてもGDP比の増加原因になる。
医療の性格上、GDPが減ったからといって簡単には削れない。
日本は高齢化がどんどん進む。
放っておいても、勝手にGDP対比は上昇することが目に見えている。
つまり、財政がにっちもさっちもいかなくなる方向に流れている。
財政が破たんすれば、最終的には医療も提供できなくなる。
小規模な形ではあれど、地方自治体ですでにそういった例が出ています。
国家財政が破たんすることはイメージすることが難しいが、十分にありうる。
(1)の論者は、それを加速させることになる。
たしかに、日本の医療に問題はたくさんあります。
それを改善することには、大賛成。
ただ、その前にムダなことは削る努力が絶対必要。
国の財政問題として、捉えてた時には医療費の伸びは最低限に抑える。
一方で、医療支出の中でどれだけ効率的に予算を使っているのかは、徹底的にチェックする。
これが、基本だと思います。
そういえば、効率的に予算を使っているか否かは、どういった指標でチェックされているのでしょうか?
「命は、金では買えない」これは、真実
「国の予算には、限度がある」これも、真実。
時に、相反する二つの真実があるからこそ
医療問題の根は非常に深いのですが、そこから目を逸らしてしまうと
後の世代に思い負債を背負わせることになります。
柴崎高聡
2009年11月24日カテゴリー:医療全般