医療業界とマネジメント
こんばんは。ローザスの小澤です。
今日はニュースではないのですが、
医療関係者にとって興味深い文章があったのでこちらをご紹介させていただきます。
神戸大学の教授、松尾睦氏が執筆されたケースで、
題名は「済生会熊本病院の組織変革 ―医療の質と経営効率の両立―」。
済生会熊本病院の「経営改革」を進められた正木義博さんに焦点をあてたものです。
正木義博さんは、一般メーカー出身で、
病院ではメインとされない事務職であったにもかかわらず、
経営改革を進めていくことができた点が特徴的です。
正木さんが熊本病院にいた平成7年から17年にかけて、
医業収益を104億から154億へ、紹介率を37.5%から53.2%へ、
入院単価を47,279円から68,567円、新入院数は8,128人から11,612人へと延び、
結果、医業利益は黒字経営を維持し、ほぼ10億円前後で推移しています。
平均在院日数は、なんと17.7日から11.8日へと低下しています。
これが入院単価の上昇に大きく影響しています。
見事に経営を立て直した正木さん。
詳細の内容に関しては本文を参考にしていただければと思うのですが、
事務職にとってポイントとおもわれる点をあげると、
・事務職が医療職に対して現状をデータで説明出来るようにすること。
(経営状態や医療の質をデータで定義して、測定し、説明出来る)
・院長が事務方の改革に協力している
(事務トップと医療トップの信頼関係がある)
・事務職トップが部下に仕事を任せられる度量がある
(大まかな戦略はつくるものの、具体化は部下に委ねチェックできる)
・事務職への学習機会、活躍機会を多く作る
(医療職に負けないぐらい、学びの機会をつくる)
などがあります。
この内容、どことなく見たことがあるのですが、
伊丹敬之氏が、力ある日本企業を分析した結果、
共通して見られる「場のマネジメント」においてリーダーが果たすモデルにそっくりです。
・目標を定め、おおまかな流れをつくる
・詳細は部下に任せて見守る
・成果を評価し、導く
つまり、企業でリーダーシップを発揮していた人の力は、
医療界でも求められているということです。
今後、そういった人材が医療界に入って行くことが重要ですね。
最後に、正木義博さんの言葉を、少し長めになりますが引用させて頂きます。
「医療界を取り巻く環境は激しく動いていますが、
今、病院経営に必要なものは経営計画です。
そして、経営計画で重要なものはビジョンと戦略です。
しかし、戦略は策定するだけでは何も変えることはできません。
戦略に伴った行動計画が大切になります。
そして、その戦略や行動計画がうまく達成されているかどうか
見守るマネジメントが重要です。
特に、他人に対するマネジメントが重要であることはいうまでもありません。
そうしたマネジメントを支援する役割をはたすのが
これからの事務職員の努めであるといえるでしょう。」
2012年07月20日カテゴリー:医療全般