看護職の賃金のあり方が変わる?!
日本看護協会は、2016年6月20日「病院で働く看護職の賃金のあり方」を提案・発表しました。
この提案の目的としては、2つあります。
1つ目は、看護師が、専門職としてキャリアを自ら高める事ができ、やりがいや充実感を持って働き続けられるようになることです。
そして2つ目は、病院が、看護職の定着を促進し、多様な人材の確保・活用をはかり、質の高い看護を提供できるようになることです。
女性が多い看護職が、ライフステージが変わっても仕事を続けられるように、これまでも様々な工夫が各病院でされてきました。
その甲斐もあってか、時代が原因なのかは分かりませんが、現在は結婚・出産後も、仕事を続けている看護師さんが多くいます。
看護職においても「定年まで仕事をすること」が、ある程度当たり前の概念になってきているのでしょう。
そういった中で次に求められることが、今回看護協会が提案した内容なのだと思います。
ご自身の人生において「仕事」に重きをおいて、自分のキャリアを確実に積み上げていき、それ相応の報酬を得たいと思う人、「家庭・私生活」に重きをおいて、仕事との両立をはかり、無理なく働き続けたいと思う人。
どちらの選択をしたとしても、病院という職場において看護職として長く勤めあげられるように、ということが、今回の提案にまとめられているのだな、と感じました。
では、その提案の中身はどういったものなのかを説明していきます。
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【提案①】看護職の賃金体系モデルの変更
看護師の給与体系は、現状は「学歴」「経験年数」「保有資格」「所属部署」「勤務形態」などによって変動しています。
一昔前のように、言い値でお給料が決まっていた頃に比べれば、給与計算方法が各病院によって統一され、公平になったと言えるのでしょう。
しかし、実際に現場で働いている看護師の中では、「私は、この役割もまかされていて、これだけ勤務に対しても一所懸命取り組んでいるのに、なぜあの人と同じお給料しかもらえないんだろう」という不満が出ていることも事実です。
一方で「どうせこれだけのお給料しかもらえないのであれば、必要最低限の仕事だけやっていればいいや」という気持ちになっている看護師もいるかもしれません。
看護師であろうと、いち社会人として組織の中で働く上では、お給料に関してはサラリーマンのような気持にもなるのでしょう。
そのような目に見えない不満を解消し、職務の遂行能力や個々の看護職がになっている役割、専門性による貢献度に応じて賃金を決定する「複数型人事制度」「等級制度」を組み合わせた「賃金体系モデル」が望ましい、としているのが、今回の提案です。
上の表のように、まずは新人看護師は「専門職群」の1等級からスタートし、その中で等級を上げていくことを目指していきます。
等級を上げていく中で、より専門性を高める「高度専門職群」を目指すのか、師長や看護部長に向かう「管理・監督職群」を目指すのかを、決めていくことになります。
ちなみに、現状の教育制度の一つに「看護師キャリア開発ラダー」というものがありますが、今回の提案では、このラダーと等級を組み合わせたものも提示されています。
専門職群の中で等級を上げていくためには、具体的にどのようなスキルが必要なのか、どういった役割が求められるのかが、この表を見れば一目瞭然になるわけです。
【提案②】多様な人材を確保・活用するための賃金処遇
先にも書きましたが、看護職は女性が多いので、ライフステージの変化によっては、フルタイムで働くことが難しくなることがあります。
これまでは、そういったことへの理解が浅く、結婚や出産をしたら退職せざるをえない看護師が多くいました。
しかし今、10~20年前に一旦退職をし、子どもの手が離れたので、看護職として復帰しようとしている潜在看護師が増えてきています。
看護職は技術職でもあるので、やはり長くブランクが出来ると、復帰することにも勇気がいるようです。
せっかく取得した技術をおとろえさせない為にも、可能なかぎり現場で働き続けられることが、看護師さんにとっては理想なのでしょう。
それを可能にするための制度が、今回の提案の2つ目になります。
(1)短時間勤務の正規職員に関する賃金処遇
(2)夜勤労働に関する賃金処遇
多様な人材を、確保・活用するために、この2つの賃金処遇の改善をかかげています。
これは、おもに家庭や私生活と仕事を両立させたい看護師のための制度と言えるのですが、自分の可能な範囲で仕事ができる制度が整うことで、「働き続けたいけど、フルタイムでは働けないから退職せざるを得ない」といった状況をなくすことを目的としています。
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今回の看護協会のこの提案は、あくまで「提案」であり、具体的な導入計画や予定は発表されていません。
この提案が絵空事で終わらず、一日でも早く、きちんとした制度として導入されると良いな、と思います。
2016年07月05日カテゴリー:看護師